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◎図解の普及を振り返る

 知的財産を扱う業界では、永年に亘って言語のみで伝える、という習慣があったように感じています。
私が推測する理由はいくつかあります。
 第一に、知的財産は法律で扱うため、法律家が言葉(のみ)を手繰るから。
 第二に、発明は技術的思想であり、言葉で定義できる、としていることに引きずられているから。
 第三に、単に、指導者サイドが図解する能力に乏しかった、または必要性を感じていなかったから。

 さて、私は文字や言語よりも図解されたら理解できるタイプだったようで、
言語のみで仕事や勉強の伝授をされることに対して、
理解できるまでの時間が、周囲の人と比べたら圧倒的に掛かりました。

 弁理士試験に合格した後、仕事の関係で宅建(宅地建物取引主任者)の分野の知識が必要となり、
試験対策本で勉強するのが早かろうと探しに行った際に驚きました。
 図解、漫画などを駆使して、法律概念をわかりやすく説明している本が多かったのです。
それに刺激を受けた私は、自分なりに図解を工夫するようになりました。90年代半ばのことです。
 当時は、

  法律を図で説明しようとは何事だ! 正確さに欠けるだろ?!

と真っ向から否定されたことは、一度二度ではありませんでした。
 しかし、最初からの正確さ(を求めて理解に時間が掛かったり理解を挫折したりする)よりも、
正確さを欠いても良いから大づかみにすることの方が重要、と私には思えた(今でもですが)ので、
チャレンジし続けました。

 その後、弁理士試験の合格率が引き下げられ、合格者が増えるようになってきたら、
知的財産関係でも図解が多用されるようになり、現在では当たり前ともなった気がします。
 また知財検定(知的財産管理技能検定)の資格創設によって裾野が広がったことも、
図解というニーズが広がり、そのニーズに応える指導者も増えてきたように思います。
 更に、パソコンやプレゼンテーション用アプリケーションの普及も、そうした状況を後押ししたのでしょう。

 大学の授業に限りませんが、私が知的財産に関する概念など伝える場合には、
できる限り図解をするようにしています。
 自分と似たタイプの受講者に対して、理解を早められるように。

   (2017年11月作成)