◎たかが従業員、による訴状(6)

Top >  フィクション >  ◎たかが従業員、による訴状(6)

◎たかが従業員、による訴状(6)

「シマナガ顧問を使って、ムラナカの訴状を取り下げさせることはできんのか?」

社長室内の嵐を自ら収拾させ始めたナベツが総務部長に訪ねた。

「シマナガ技術顧問は、まだ脳梗塞のリハビリ入院中です。当分無理でしょう。」


ジャイアント工業に限らず、組織の中では、型破り人間は生きにくい。
個性を押し殺すことで生きるすべを得るか、組織を飛び出して居場所を求めて転々とするか・・・


ムラナカが個性を殺さずにジャイアント工業で生きていくことができたのは、
シマナガがムラナカの良き理解者であったという幸運も味方した。
若手社員からは「翁」と呼ばれて親しまれている。


シマナガがムラナカを孫娘のようにかわいがり、時にかばっていた。
シマナガ翁がいたからこそ、「カタヤブリジェンヌ」と陰口をたたかれても、
ジャイアント工業で頑張れたのかもしれない。

「オウ顧問も、最近、胃を切ったばかりだしなあ。」


ナベツが目論んだように、シマナガ顧問に一肌脱いでもらえれば、
ムラナカの訴状は、もしかしたら取り下げらるのかも知れない。
しかし、その一手は、今は使えない。


一方のフルヤは、

 「日本はこれからも技術立国として生きていかなければならない。
 それなのに理系離れが進んでいる。
 ムラナカさんには、『理系の野口みづき、宮里藍』になって、子どもたち、
 働く女性たちの憧れの的になってもらいたい。そのためにも、私が勝たせます。」

と、ムラナカに宣言した。


こうして元従業員のエンジニア=ムラナカから、
ジャイアント工業を相手取った訴訟が提起された。

ライバル社の「Jリグ」などの代替品に押され始めて利益率が急減している
ジャイアント工業にとっては、間の悪い話だ。


「発明の対価として、10億円を支払え」という訴状が社長室に届いたのだ。

ムラナカの代理人は、もちろん弁護士フルヤである。
最近、マスコミにも引っ張り出され、キラリと光る縁なし眼鏡が印象的だ。

ナベツの言葉「たかが従業員」という言葉がもしフルヤの耳に入ったら、
関西弁で軽やかな突っ込みがあるかもしれない・・・

(終わり)

スポンサードリンク

知財情報をリサーチ(ランキング)

関連エントリー

知財コンサルティング


知財系メルマガ

メールアドレスを入力してください
>>バックナンバー
知財最新ニュース
RSS配信中